2023年3月15日水曜日

「地域における防災」②

 「地域における防災」講演会 後半 

みんなで作る「タイムライン」 

私たちは個別計画を地区防災計画の中に取り入れるために「災害リスクコミュニケーション(情報を共有し意思の疎通を図ること)」に取り組んでいます。目的は地域、地区の防災マップを作るためです。

まず、「地域のことを知る」ことから始め、地図を作り行動について考える「タイムライン(どのタイミングで避難するか)」を作ります。

これを合わせると「災害リスクコミュニケーション」が出来上がります。これを「地区タイムライン」や「コミュニティータイムライン」と呼んでいます。

 具体的には町歩きをして地図を作る⇒タイムラインについて意見交換をする⇒合意形成をする⇒みなさんに配るという手順です。

要支援者が住む家の地図は全部には配りません。配ると泥棒マップになります。役員、民生委員などが持つようにした方がいいと思います。 

地区防災マップ

地区防災マップには避難ルート、危険個所などを書き込みますが、その土地の由来や成り立ちは専門家でないと分かりません。地理院地図を見ると昔はどんな土地だったのかを知ることができます。

 マップには高齢者など支援が必要と思われる人を書き入れますが、80歳でも元気な人は入れません。

 基本は自己申告制、推薦制です。未就学児が住む家も入れます。マップの中では、そういう人を「要支援者」と呼んでいます。

なぜこれをするかというと、行政がやると個人情報保護法を触発するからです。

「この場で教えてください」と言って、みんなで書き込めば居住が不明な家などが確認できます。「この家は注意が必要かどうか」を知ることにもつながります。

とはいえマンションは分かりません。分からないのは仕方がないのであきらめてください。

 「マイタイムライン」と「タイムライン」 

タイムラインには、「いつ誰が何をするか」を記入します。これと地図を合わせればリスクが分かります。逃げるタイミングも分かります。慌てずに行動することもできます。頭の中でシュミレーションすることで、どうすればいいかも分ります。

 「マイタイムライン」は自分だけのタイムラインではありません。

災害はいつ起こるか分かりません。子どもは学校、お父さんは会社、お母さんは買い物……家族全員を含めたマイタイムラインを作って下さい。犬も動物も入れてください。

地区のタイムラインには、災害の時には誰が避難食を準備するのか?逃げるタイミングはいつか?――地区の中で共通することを書き入れ、みんなで理解しておくことが大事です。

「マイタイムライン」の記入シートは市のホームページから入手できます。

 

「避難行動要支援」の課題 

 災害では多くのお年寄りが亡くなっています。リスクを考えると、弱者の方々に対してのケアができていないということになります。

  災害時に支援を求めている人は、「避難行動要支援者名簿」に登載されている人です。名簿にはないが支援を必要とする要配慮者(高齢等、障害のある人等)もいます。

 支援は名簿に登載されている人だけでいいのか?――考える必要がありますが、まずは自分と地域が先です。もう少し頑張ろうという時に支援の輪を広げます。

マイタイムラインとコミュニティータイムラインの中から抜き出せば個別避難計画はできます。

 

「避難計画作成」の展望 

風水害は危険を避ける支援が中心になりますが、地震は発生後の安否確認から始まります。風水害も安否確認は必要ですが、目的は「危険を避ける」ことです。そこは間違わないようにしてください。

 対象者の避難能力も考えて下さい。「自分は大丈夫」という人も思った以上にできないことがあります。

 しなければならないことは「避難の支援」「「安否確認」「発災後の生活支援」です。みんなが協力できる体制を作っておくことが大事です。

無理せず実効性ある支援に 

 これまでの個別避難計画には「救出」活動が入っていましたが、最近は避難の「支援」に代わりトーンダウンしています。

「支援者が要支援者を避難所に連れて行きなさい」というところまで言っていません。「行きなさい」ということを事前に理解してもらい、「行った?」「行けた?」「行けなかったら手伝いにいくよ?」と声をかけ、「避難所に行ったことを確認する」という内容に変わっています。

それは支援する人の被害を無くし、より実効性がある内容にする必要があるからです。そのためには支援実施者だけでは無理があります。向こう三軒両隣が大事になってきます。

あの人もこの人も――支援しなければならない人、しなくて良い人を考えないと民生委員は大変です。これから益々増える可能性が高い要支援者。前例を作ったら若い人のなり手が居なくなります。優先度が高い人はどういう人かを議論することも大事です。 

まとめ 

高齢化や隣近所のつながりが無くなる現象が進んでいます。コミュニティーの在り方を考えて行くことが大事です。

 行政指導に頼るだけではなく「自分たちの防災計画を作る」ことを塩原地区の活動の一つとしてください。タイムラインは最初から百点満点を作る必要はありません。1回目は30点。それを使って防災訓練をすると改善箇所が見えてきます。

これを1年ごと、あるいは世代交代する時に繰り返しやらないと根付いてきません。時間がかかります。日頃から続けて行くことがプラスになります。これをきっかけに防災のことを考えていただければと思います。

文 自主防災会 会長 川添繁美